建築家安藤忠雄の建築を学ぶため香川県直島への旅

この記事は、2015年8月28日に公開したブログのアーカイブ記事です。

執筆:杉山幸治(株式会社SOWAKA・一級建築施工管理技士)

こんにちは。

名古屋や尾張旭でリノベーション、注文住宅の提案をしている株式会社SOWAKAの杉山です。

2015年の夏期休暇は少し多めに取る事とし妻の実家である九州へ帰省、そしてかねてより憧れていた香川県の直島へと渡った。

 今から8年程前のこと。

学生の頃から建築家安藤忠雄が好きでこの業界に入った事もあり、自分の結婚式は、ホテルでの披露宴というのが頭になく「光の教会」で結婚式、そして新婚旅行もニューヨークでの建築見学を兼ねたいと考えていました。

「光の教会」とは大阪府にある茨木春日丘教会の事で安藤忠雄氏の代表作のひとつ。

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しかし、光の教会からは結婚式場ではないとの事で断られてしまい、それでも諦めきれず何回か通っているうちに当時牧師だった軽込牧師と話し合いをする機会があり、式を挙げるまで日曜礼拝に来るなら良いとの条件で承諾をもらう事ができ、現在も洗礼は受けず無宗教として年に1回日曜礼拝へ行く事としている。

頻繁に通っていると新しく牧師会館を建て替える計画があった事もあり、今日は近くで安藤先生が来ているよ等の情報がもらえる様になり実際に何度か会いに行きました。

有名になると人物について賛否両論ですが、気さくに話しかけてくれる巨匠の作品をもっともっと見たいということから、いつか直島へいこうという想いが強くなりました。

岡山県の宇野港から船で直島の西海岸へ。
西海岸から「家プロジェクト」のある東海岸へはバスで5分ほどの小さな島。

家プロジェクト周辺には見学ができる場所が多いのですが、普通ののどかな島が20年前から急に観光地となって、島民の意識改革と協力が無ければ成り立たないプロジェクトだったと思います。
もともとは直島町長が発起人であった事から考えると、町おこしが当時の島民の願いだったのかもしれませんね。

そこに福武書店(現ベネッセ)という巨大企業が加わり、福武社長と親交のあった安藤忠雄氏が参画した事で、世界的に有名なアートな島へとイノベーションしたとのこと。

確かに観光客のほとんどが外国人なので散策していると英語で話しかけらることもあり、英会話ができるともっと国際色豊かな考えで楽しく見学ができるのでしょう。

さて、たっぷりと安藤建築を満喫できる直島ですが、個人邸の改修がメインの弊社はAndo museumに注目したいと思います。

安藤忠雄氏の建築というと、コンクリート打ち放しの巨大な公共施設や宗教施設を連想してしまいがちですが、「住吉の長屋」の様にコンクリート造の個人邸も有名です。

直島には地中美術館やベネッセミュージアムなど島全体の景観を損ねる事なく自然と融合した芸術エリアと、「家プロジェクト」という古い町並み全体をアートとしている島民生活と融合したエリアがあります。

この家プロジェクトエリアに建つ築100年のAndo museumは、直島プロジェクトの基本的な考え方に基づいて島の景観を変えない建物となっています。

 地図を見ながら目的地まで歩いて散策する訳ですが、他の家と何ら外観が変わらないので表札がなければ探せないほど町並みと溶け込んでいました。

過去と現在

木とコンクリート

光と闇

対立した要素が重なり合う。

小さいながらも安藤忠雄の建築要素が凝縮された空間ということなので、住む為の建物改修とは程遠い空間ではありましたが、光の使い方はさすが世界の安藤忠雄だなと感心してしまいました。

古民家をいったん解体し,コンクリートの構造を作ってから再び古民家の外装を復元するという手法でできた、古いように見えて新しい建物であり空間なので、改修というよりも古材も使用した混構造新築といった方が正しいのかもしれません。

安藤忠雄氏曰く
『コンクリートの構造物を木造の民家が覆っているイメージ』

木造住宅の改修では基礎を作り替える事が困難なので、いつか2階建て木造住宅の改修にこの考え方をアレンジした工法で採用してみたい建物でした。
私の考えでは『コンクリートの構造物が木造の民家を支えているイメージ』が混構造の改修でした。

さて、Ando museumを出て色々と散策をした後に泊まったホテルは、ベネッセハウスのオーバルという建物。
この建物はベネッセミュージアムの中にあるので、美術館に泊まるという変わったコンセプトで設計されていて、オーバルの建物全体はドーナツ形をしており中央が水盤、屋上は屋上緑化となっている6部屋限定の宿泊施設です。

ベネッセミュージアム別館となっていて山の頂に位置しているため、ホテルフロントからはセキュリティー扉を通り宿泊者専用のモノレールに乗ってオーバルまで移動する事になります。

オーバルの屋上は『天空の城ラピュタ』の様な楽園となっており、宿泊者しか来る事ができない特別感を演出しています。

まさに、直島はアートの要塞みたいな島でした。

私は幼少の頃「ゲゲゲの鬼太郎」で、自然を壊し山を削り開発をして住宅建設をする建設業者を妖怪達が襲うというシーンを観てから、子どもながらに環境破壊を繰り返す建設業が好きではありませんでした。

妖怪が怖かった事もありましたが。

しかし、この直島プロジェクトを始めた頃に高校生だった私にはコレだ!と、とても共感し感動した覚えがあります。

そしてもう一つ、家プロジェクトの中にある『角屋』という宮島達男さんの作品で、窓ガラスに電極をあてて透明ガラスを曇りガラスにして形とるアート。

高校生の時にテレビのニュースで新しい建築の技術として紹介されていて、もともと機械いじりが好きだった私が、建築の道に進む一番のきっかけになった懐かしさとワクワクと初心を思い起こす旅でした。

いま、直島プロジェクトが始まって20年。私がこの業界に入って18年。


私の一番の夢は、宅地に森を造り、アスファルトで固められて息ができなくなった地球にオアシスをつくることです。

空家が増えている日本ですが、いつか開発をして壊してしまった自然を少しでも戻したいものです。

もともと人口が少なかった日本に戦後の人口増加、核家族化、宅地を造る技術の進歩もあり、都市部では夢のマイホームが持つことができない人達を対象にしたビジネス展開で、政府や土木業者が次々と後戻りができない乱開発をしてしまった。


古地図と現在の地図を見比べると一目瞭然で、人間が住む場所ではない土地だったり、住んではいけない場所に宅地開発をして家が建つように、造成ばかりで現代人には日本がどうなっていたのか分からないほど埋め立てたり削ってしまっている。
各地で自然災害がある度に「これより先に家を建てると危険」だという石碑があったと報道されているのですが、地名が物語っているのです。
お城や神社の位置は安定した場所が多いは、昔の人はよく知っていたという事。
1300年前に名古屋市はほぼ全域で海だったという古地図は有名ですが、土を乱す時には歴史を知らないと先人の残した教訓が活かされない。
日本に限った事ではないのですが、人間は地球に挑戦状を叩き付けている現状をもっと多くの人に知ってほしい。

それが自然災害という形で返ってきているのか、妖怪の仕業なのか私には分かりませんが、この業界に入ったからには造成してまでの家は建てない、長持ちをする住み継げる家づくり、建物を増やさないを適切にクライアントに伝えて、改修という手法で地球にやさしくなりたいものです。

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